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IMY知財ニュース 2023年2月 欧州統一特許裁判所協定(UPCA)
本来、特許を取得する場合、各国ごとに出願し、各国ごとに権利を得る必要があります。
しかし、欧州では、欧州特許庁(EPO)に出願することで、 欧州の複数国で効力をもつ欧州特許を取得することができます。
ただし、この欧州特許を有効化するには、欧州各国で有効化手続きを行う必要があります。
そこで、欧州では、手続きの簡素化とコスト削減を目的として、 欧州各国での有効化の手続きを経ずに、単一的な効力を持たせることが可能な制度を導入することにしました。
その制度は、2023年6月1日に発効される予定の「欧州統一特許裁判所協定(UPCA)」で、「欧州統一特許裁判所協定(UPCA)」は、「単一効特許」および「統一裁判所」のニ本柱となっています。
今回は、「単一効特許」および「統一裁判所」の概要についてお知らせいたします。
1.単一効特許(Unitary Patent)
単一効特許は、UPCA批准国※において一括して有効となる特許権であり、批准国全体において単一の特許権として効力を有します。
UPCA発効後(2023年6月1日以降)に特許公報が発行される特許は、「従来通り各国毎の登録」に加えて「単一効特許」を選択することが可能となります。
UPCA発効前に、EPC規則71(3)の許可通知に対する応答手続きを行うと、特許公報の発行時期によっては「単一効特許」を選択する機会を失ってしまう場合があります。
そのため、経過措置として、UPCA発効前の5カ月間(2023年1月1日~5月31日)にEPC規則71(3)の許可通知がされた出願に対して、以下の手続きをすることができます。
① UPCA発効前に「単一効特許」の早期申請を行うこと。
② UPCA発効後に「単一効特許」を選択できるように、特許公報の発行の延期申請を行うこと。
2.統一裁判所(UPC: Unified Patent Court)
統一裁判所は、特許取消訴訟および特許侵害訴訟を管轄する裁判所であり、単一効特許だけでなく、従来の欧州特許(発効日よりも前に国毎に登録された特許)も、原則として、統一裁判所の管轄下となります。
ただし、UPCA発行日から所定期間(7~14年間)の移行期間中、従来の欧州特許は、各国毎の裁判所とUPCの両方で管轄され、この移行期間内およびサンライズ期間内(2023年3月1日~5月31日)に「オプトアウト」することができます。
これにより、統一裁判所の管轄から外れ、従来通り国毎の裁判所の管轄にすることが可能となります。
●権利者の立場から見た「オプトアウト」することのメリット
セントラルアタック(統一裁判所で特許が取り消された場合に、UPCA批准国の特許権が全て消滅すること)を回避することができる。
●権利者の立場から見た「オプトアウト」することのデメリット
各件について「オプトアウト」する手続きは、面倒かつ費用がかかる。
多数の国で侵害事件が発生した場合、各国ごとに訴訟を提起しなければならない。
(出典:https://www.unified-patent-court.org/en/organisation/upc-member-states)
※UPCA発効時にUPCA批准を予定している国(UPCA批准国)は、以下の17カ国(2022年12月時点)
オーストリア、ベルギー、ブルガリア、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルグ、マルタ、オランダ、ポルトガル、スロベニア、スウェーデン
(M.M 記)