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IMY知財ニュース 2024年4月 生成AIを利用した発明の進歩性の判断事例

ChatGPTなどの生成AI(大規模言語モデル)は、入力した質問に対し、即座に回答文を生成して出力するため、様々な分野で生成AIを利用する機会が増えていると思います。

 

特許庁では、今般(令和6313日)、AI関連技術の審査事例に、生成AIによる文章生成技術を利用した発明についての進歩性の判断事例を追加し、公表していますので、その概要を紹介します。

 

 

<事例1:生成AIの単純な利用パターン>

◆事例1の発明の概要

金融商品に関する問合せ対応において、質問者による金融商品に関する問合せの質問文に対する回答文の作成を、カスタマーセンターの担当者によって行うことから、大規模言語モデルを用いたカスタマーセンター用回答自動生成装置に代替した内容の発明。

 

◆仮設請求項の特徴

・請求項1:質問者による金融商品に関する問合せの質問文を受け付けて、質問文に対する回答文を自動生成する「カスタマーセンター用回答自動生成装置」が、質問文を大規模言語モデルに入力することで、回答文を自動生成する

 

 

 

 ◆仮設請求項の進歩性判断

・請求項1の進歩性・・・ ×(特許を受けることができない)

(理由)

請求項1は、人間が行っている業務の生成AIを用いた単純なシステム化であるため、進歩性が否定される。

 

 

<事例2:生成AIの適用に工夫があるパターン>

◆事例2の発明の概要

大規模言語モデルに入力するためのプロンプトをコンピュータが生成するプロンプト用文章生成方法において、参考情報として質問文に関連した付加文章を生成し、質問文に追加するプロンプト用文章生成方法についての発明。

 

◆仮設請求項の特徴

・請求項1:大規模言語モデルには制限文字数が設定されており、「プロンプト用文章生成方法」を実行するコンピュータが、質問文の文字数と合わせた合計文字数が制限文字数以下の文字数となるように付加文章を生成する付加文章生成ステップと、生成された付加文章を参考情報として追加することによってプロンプトを生成するプロンプト生成ステップとを実行する。

 

・請求項2:上記付加文章生成ステップが、入力された質問文をもとに関連文章を複数取得し、取得された複数の関連文章から複数のキーワードを抽出し複数のキーワードを使用して、合計文字数が制限文字数を超えない付加文章を生成するステップである。

 

  

 

◆仮設請求項の進歩性判断

・請求項1の進歩性・・・ ×(特許を受けることができない)

(理由)

言語処理の技術分野において、情報処理量が過大にならないようにすることは、当業者が通常考慮する自明な課題であり、また、その解決方法として、入力できる文章の上限である制限文字数を設定し、文章が当該制限文字数を超える場合に、当該制限文字数を超える部分を破棄することで、実際に入力される文章を制限文字数以下の文字数となるように作成することは出願時における周知技術である

そうすると、・・・(中略)・・・プロンプトが当該制限文字数を超える場合に、当該制限文字数を超える部分を破棄することで、質問文の文字数と合わせた合計文字数が制限文字数以下の文字数となるように、前記質問文に関連した付加文章を生成し、実際に入力されるプロンプトを制限文字数以下の文字数となるように生成することは、当業者であれば容易に想到し得たものである

 

・請求項2の進歩性・・・ 〇(特許を受けることができる)

(理由)

請求項2に記載の構成を開示する先行技術は発見されておらず、出願時の技術常識でもないとすると、請求項2に係る発明は、当該構成により、所定の制限文字数内で、質問文と関連性が高く参考情報として適した付加文章を付加したプロンプトを生成することができ、より信頼性が高く適切な回答文を得るという有利な効果を奏するものである。

 

 

<コメント>

上記のように、生成AIの利用発明も、通常のAIの利用発明と同様に、情報処理の技術分野において自明の課題を解決する手段(のみ)を特徴とした発明は、進歩性無しと判断されますが、先行技術等に対する有利な効果があれば、特許を取得できる可能性があります。

 

弊所では、AI関連発明にも対応可能ですので、お気軽にご相談ください。

 

※特許庁は、上記事例の他にも、AI関連技術の審査事例を追加していますので、ご興味のある方は、下記をご参照ください。 

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/document/ai_jirei/jirei_tsuika_2024.pdf

 

A.S 記)