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IMY知財ニュース 2022年12月 メタバースと商標

今回は、『メタバースと商標』についてお話します。

 

近年、オンライン上の仮想空間である「メタバース」を用いたゲームが流行しています。

メタバースゲームでは、ゲーム内のアイテムがNFT(ブロックチェーン技術によって希少性が担保されたデジタルデータ)になっているため、NFTアイテムであるデジタルプロダクトを自由に売買することができます。
たとえば、プレイヤーは、アバターが着用するファッションアイテムなどを、ゲーム内の通貨で購入することができます。

 

<参考>
「フォートナイト バトルロイヤル」 Epic Games社

↓ゲーム内通貨『V-Bucks』

 

※上記2つの画像は、任天堂ウェブサイトより引用したものです。
※「FORTNITE」はEpic Games社の登録商標です。

 

このようなメタバースとNFTは、ゲーム業界に限られず、様々な業界で注目を集めています。また、メタバース上の経済活動は、知的財産との関係においても、注目を集めています。

 

たとえば商標権との関係においては、現実社会での商品(たとえば衣類)を指定商品とした商標権の効力が、メタバース上でのデジタルプロダクトにまで及ぶかどうかが問題となります。
※商標法では、指定商品・役務と同一または類似する商品・役務について、登録商標またはこれに類似する商標を使用する行為は、商標権の侵害とみなされることが規定されています(商標法第37条)。

 

<仮想事例>
・A社が、「衣類」(商品区分:25類)について、『ABC-WEAR』のロゴの商標権を保有している。
・B社(メタバースの運営会社)が、A社に無断で、メタバース上で『ABC-WEAR』のロゴを付与したTシャツを(仮想通貨で)販売している。

 

上記仮想事例の場合、A社は、自社の商標権に基づいてB社の販売行為を差し止めることができるでしょうか。

 

現状では、デジタルプロダクトと現実社会の商品とは非類似と判断されるため、『ABC-WEAR』が著名な商標でない限り、B社の販売行為を差し止めることは難しいと考えられます。

 

メタバース産業の発展に伴い、様々な法整備が期待されているものの、法整備が実現されるのはまだまだ先のことと思われます。

 

そのため、重要な自社ブランドについては、仮に、メタバース上での経済活動を行う予定がない場合でも、現実社会での商品・役務に対応するデジタルプロダクト・役務を指定して商標登録を受けておくことを検討することが望ましいです。

 

アメリカのナイキ社は、自社ブランド『NIKE』について、メタバースでの経済活動を想定し、昨年、新たに商標登録出願をしています(商願2021-132593,商願2021-132597)。

これらの出願で指定している商品・役務名はとても参考になりますので、以下に記載します。

 

①9類:仮想商品、すなわち、オンライン上の仮想世界及びオンライン上で使用する履物・運動用特殊靴・被服・帽子・眼鏡・バッグ・スポーツバッグ・バックパック・運動用具・美術品・おもちゃ・身飾品及びこれらの付属品を内容とするダウンロード可能なコンピュータプログラム,コンピュータプログラム(記憶されたもの)

②35類:仮想商品、すなわち、オンライン上で使用する履物・運動用特殊靴・被服・帽子・眼鏡・バッグ・スポーツバッグ・バックパック・運動用具・美術品・おもちゃ・身飾品及びこれらの付属品の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,オンラインによる仮想商品、すなわち、オンライン上の仮想世界及びオンライン上で使用する履物・運動用特殊靴・被服・帽子・眼鏡・バッグ・スポーツバッグ・バックパック・運動用具・美術品・おもちゃ・身飾品及びこれらの付属品の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供

③41類:仮想空間で使用するダウンロードできない仮想の履物・運動用特殊靴・被服・帽子・眼鏡・バッグ・スポーツバッグ・バックパック・運動用具・美術品・おもちゃ・身飾品及びこれらの付属品の提供,電子出版物の提供,娯楽の提供

 

弊所では、メタバースを想定した商標登録出願も取り扱っております。
ご興味のある方は、弊所までご連絡下さい。