IMY知財ニュース 2023年10月 「X」にまつわる商標のお話
今年7月、アメリカのソーシャルメディア大手、ツイッターは、象徴だった青い鳥のロゴを廃止し、「X」に正式に変更しました。
今回は、「X」にまつわる商標のお話をしたいと思います。
◆「X」の登録可能性
日本では、「X」の一文字のみを標準文字として商標登録することはできません。商標法第3条第1項第5号の「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標」に該当するためです。
しかし、SNSで実際に使用している下記のようなロゴ商標であれば、一定の識別力があるため、同一または類似する商品/役務に対して使用する同一または類似の他人の登録商標がなければ、登録される可能性があります。
◆「X」のアカウント名はどうなる?
「X」の商標について調べていると、ツイッター時代の日本のアカウント名が「Twitter Japan」であったことから、日本で有名なロックバンド“X JAPAN”と同じ「X Japan」というアカウント名を使用できるのか?ということが、ネット上で話題になっていました。
“X JAPAN”の所属する株式会社ジャパンミュージックエージェンシーは、「XJAPAN」の文字を標準文字で商標登録しています。しかし、この商標は、9類の商品(電子機器、記録媒体など)と28類の商品(ゲーム、おもちゃなど)を指定商品/役務として登録されており、SNSに関連する役務(45類のオンラインによるソーシャルネットワーキングサービスの提供など)は指定されていません。
したがって、旧ツイッターが、オンラインによるソーシャルネットワーキングサービスの提供に対して「X Japan」のアカウント名を使用しても、(原則として)問題にはならないと考えられます。
◆報道直後の商標出願
J-Platpatの商標検索画面で、称呼「エックスジャパン」として検索すると、ツイッターの改名報道の直後(2023年7月27日)に、オンラインによるソーシャルネットワーキングサービスの提供(45類)などを指定商品/役務として、「X JAPAN」の文字(標準文字)が出願されていることが分かりました。
この商標の出願人は個人であり、現時点では、旧ツイッターとの関係が不明です。
指定商品/役務が上述したロックバンド「XJAPAN」の登録商標の指定商品/役務と異なるため、形式的には商標登録可能ですが、商標法第3条第1項第15号(他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれのある商標)や、第19号(他人の周知商標と同一又は類似で不正の目的をもって使用する商標)により、拒絶される可能性があると思われます。
今後の審査状況が気になるところです。
(A.S 記)