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IMY知財ニュース 2023年3月 主な国での用途発明の取り扱い

コロナ禍になって約3年経ちますが、ようやくマスクを外せる時期になってきました。
約2年前に「コロナワクチンと用途発明」についてニュースでお知らせしましたが、今回は、主な国での用途発明の取り扱いについて簡単にご紹介します。

 

用途発明は、公知の物質の新規な用途を発明特定事項とした発明であり、
たとえば、公知の発明として「成分Aを含有する除草剤」がある際に、後願として「成分Aを含有する殺虫剤」を出願した場合、後願の「殺虫剤」についても、害虫を駆除するという成分Aの未知の属性を発見することにより見出された発明であると判断され、新規性があると判断されます。

日本では上記のように判断されますが、用途発明の取り扱いは各国によって異なります。

 

(1)日本

・「ある物質の属性(性質)が未知であること」を用途として記載することで用途発明として認められる(新規性あり)。
・主に物の構造や名称から用途を理解することが困難な分野(化学組成物、合金材料分野)で適用される(機械、装置等は物と用途とが一体であるため用途発明の考え方は適用不可)。
・「物の発明」または「方法の発明」どちらでもOK。

 

(2)米国・欧州

・公知物質を用途で限定する物の発明(プロダクトバイユースクレーム)は、物の構成に影響がなく公知物質として審査される(新規性なし)。
・公知物質の未知の特性の上に築き上げられた当該物の新たな利用法は、新たな利用方法を提供する方法発明(プロセスクレーム)として審査される(新規性あり)。
・上記より、「方法の発明」のみOK。但し、欧州は、第2医薬用途発明(*1)の場合のみ例外的に「物の発明」も認められる。

(*1)第2医薬用途発明=公知の医薬品の適用患者・適用部位・適用疾患等の用途が異なる発明

 

(3)中国

・物の構造等に影響を与えない場合は、単に製品の用途や使い方を記述しているだけと判断され、用途発明として認められない(新規性なし)。
・用途限定が物の構造や固有の特性に影響を与える場合には、用途が特徴として認められる(新規性あり)。
・但し、第2医薬用途発明の場合、物の構造に影響を与えなくても、スイスタイプクレーム(*2)とすることで認められる(新規性あり)。
・上記より、基本的には「方法の発明」のみ認められ、第2医薬用途発明の場合は例外的に「物の発明」も認められる。

(*2)スイスタイプクレーム=物質の用途を「使用」というカテゴリで記載する形式のクレーム(例「X用途のための物質Yの使用」)。

 

(4)韓国

・医薬品・化粧品の場合、原則として「物の発明」のみOK。
・化合物の場合、用途限定は原則構成として認められない(新規性なし)。

 

上記のように、化合物の物の発明まで認められるのは特殊なケースであることがわかります。
日本では、「物」「方法」「使用」のいずれも登録可能ですので、うまく活用していきたいですね。