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IMY知財ニュース 2026年4月 テント用「ペグ」に関する意匠と不正競争の事件
皆さんは「ペグ」というものをご存じでしょうか。テントを張るためのロープを、地面に固定するために使用する杭です。
ペグの形状を巡り、いずれも有名なアウトドア用品メーカーであるスノーピーク社と山谷産業社が、約5年半にわたり裁判をしていましたが、このたび、最高裁がスノーピーク社の上告を棄却することにより終結しました。
事の発端は、2020年、下記写真左の商品(ソリッドステーク)を販売するスノーピーク社が、下記写真右の商品(エリッゼステーク)を販売する山谷産業社に対し、「ソリッドステークの形状は、特徴的であり、消費者に広く知られているため、エリッゼステークが販売されると消費者に混同が生じる」として、不正競争防止法第2条第1項第1号に基づく販売差し止めと損害賠償を求めて東京地裁に提訴したことにあります。

(左:スノーピーク社のソリッドステーク、右:山谷産業社のエリッゼステーク)
裁判の結論を簡潔にいうと、東京地裁は、「スノーピーク社のペグの形状は、同社の商品等表示として需要者の間に広く認識されているとまでは言えず、消費者が両ペグを混同することはない」と判断し、スノーピーク社の主張を退けました。
理由の概要は以下のとおりです。
・ソリッドステークの形状は、道具としての「使いやすさ」を求めた結果であり、特定のメーカーを示す役割(特別顕著性)までは認められない。
・他社からも似たような形状のペグが多く販売されており、その形状自体がスノーピークだけの独占的なものとは言えない。
この地裁の判断は、知財高裁で維持され、さらに、最高裁でも維持されました。
ところで、スノーピーク社は、物品「テント張設用ペグ」について意匠権を有していました(意匠登録第990949号)。

(スノーピーク社の意匠第990949号(現在は消滅))
この意匠権は、1997年5月に登録され、2012年5月に期間満了により消滅しています(当時の権利期間は登録日から15年)。
その翌年の2013年に、山谷産業社のエリッゼステークが販売開始されたそうです。
このような背景からすると、スノーピーク社の意匠権は、存続期間が満了するまでの間、他社牽制として十分に機能していたと推測されます。
そして、いま、意匠権の存続期間は、“出願日から25年”と、大幅に長くなっており、権利者保護が厚くなっています。
また、関連意匠制度という、1つの意匠(基礎意匠)に類似するバリエーションの意匠(関連意匠)を保護する制度があり、関連意匠の出願可能期間は、基礎意匠の出願日から10年とされています。
このように、利便性が向上している意匠権を、知財戦略に活用していくのも一案かと思われます。
余談ですが、私はキャンプが好きでよく行きます。
ペグは、スノーピーク社のソリッドステークを愛用し、ペグを打ち込むためのペグハンマーは、山谷産業社のものを愛用しています。
どちらも素晴らしい商品で、両社が多くのキャンプ愛好家に支持されるのも納得です。
(T.A 記)
