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IMY知財ニュース 2024年12月 タコの滑り台事件

今回は著作権の限界と意匠権の重要性を示す事例について紹介します。

 

問題となったのは、公園によく設置されている「タコの滑り台」です。
この様なタコの滑り台は、タコの形状を模したユニークなデザインで親しまれています。

 

左が原告、右が被告の滑り台の写真です。

滑り台(足)の本数、丸穴の位置など、ぱっと見は、両者は似ているような印象を受けます。

 

しかし、原告はこのタコの滑り台について意匠登録しておらず、「著作権侵害」に基づく訴訟を提起しました。
そのため、本件に関する最も重要な争点は、タコの滑り台が「著作物」に該当するか否かでした。

 

この点に関して、裁判所は、タコの滑り台が「著作物」に該当しないと判断しました。
このタコの滑り台は、自治体の発注に基づき、遊具として製作されたものであり、主として、遊具の利用者である子どもたちに遊びの場を提供するという目的を有する実用品であると判断され、さらに本件滑り台を構成する各部分において、実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して、美的鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現を備えている部分を把握することはできないと判断されたためです。

 

著作権を巡る裁判では、実用品でも、美的な特性があれば「応用美術」として著作権が認められる場合もあります。しかし、高度な創作性が必要だとする考え方が一般的で、「応用美術」であると認定されるには高いハードルがあります。

 

この事件は、著作権がデザインのすべてを網羅的に保護するものではないことを改めて示しています。特に、実用性を有する要素や、日用品として機能する部分については、著作権の適用が難しい場合が多いです。

 

一方で、今回の場合、物品を「滑り台」として意匠登録をしていれば、類似であると判断される可能性が高かったように思います。

 

そのため、こうした実用性のあるデザインを保護するには、意匠権や特許、実用新案などを活用することをお勧めします。

 

令和3年(ネ)第10044号 著作権侵害控訴事件
https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/798/090798_hanrei.pdf

 

(M.M 記)