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IMY知財ニュース(2021年12月) 音商標「マツモトキヨシ」拒絶審決取消請求事件

2021年も残すところあと1か月足らず。
恐ろしいウイルス感染の防止のため、ドラッグストアでマスクを購入する機会が増えると思います。

さて今回は、著名ドラッグストアの商標出願について紹介したいと思います。

 

1.商標の概要
本願は、音楽的要素及び『マツモトキヨシ』という言語的要素からなる「音」商標の商標出願です。

商願2017-7811
(出願人)千葉県松戸市に本社を構える株式会社 マツモトキヨシホールディングス
(指定役務)薬等の小売・他サービス(35類、44類)

 

2.特許庁による審査
本願商標「マツモトキヨシ」は、他人の氏名を含む商標であるとして、拒絶査定となりました(商標法第4条第1項第8号)。
また審決で拒絶が維持されました。
特許庁の判断は要約すると下記のとおりです。

(1)出願人と無関係の『マツモトキヨシ』を氏名とする者が現存することが認められるから、本願商標は、他人の氏名を含む商標といわなければならず、かつ、その他人の承諾を得ているものとも認めることができない。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。

(2)商標法第4条第1項第8号の趣旨は、人の氏名等に対する人格的利益を保護することにあると解される。
そうすると、或る氏名を有する他人にとって、その氏名を同人の承諾なく商標登録されることは、同人の人格的利益を害されることとなると考えられる。

(3)補足
指定役務は商標法第4条第1項第8号の審査対象外です。
特許庁のルールブック(審査基準)には、「音商標を構成する言語的要素が第4条第1項各号に該当する場合には、原則として、商標全体として第4条第1項各号に該当するものとする」と規定されています。
特許庁は、「仮に本願商標が原告又はその子会社の商号の略称及び同子会社が経営するドラッグストア、スーパーマーケット及びホームセンターの店舗名を表すものとして一定の著名性があったとしても、かかる事実は本願商標の同号該当性の判断を左右するものではない」と判断しました。

 

3.審決取り消し訴訟(令和2年(行ケ)第10126号)
出願人は、特許庁の判断が不当であるとして、裁判所(上級審)へ出訴しました。
裁判所で、本願商標が商標法第4条第1項第8号に該当するという特許庁の判断が、取り消されました。
裁判所の判断の概略は以下のとおりです。

『マツモトキヨシ』の表示は、本願商標の出願当時、ドラッグストア「マツモトキヨシ」の店名や株式会社マツモトキヨシ、原告又は原告のグループ会社を示すものとして全国的に著名であり、「マツモトキヨシ」という言語的要素を含む本願商標と同一又は類似の音は、テレビコマーシャル及びドラッグストア「マツモトキヨシ」の各小売店の店舗内において使用された結果、ドラッグストア「マツモトキヨシ」の広告宣伝(CMソングのフレーズ)として広く知られていたという取引の実情を踏まえると、本願商標に接した者が、本願商標の構成中の「マツモトキヨシ」という言語的要素からなる音から、通常、容易に連想、想起するのは、ドラッグストアの店名としての「マツモトキヨシ」、企業名としての株式会社マツモトキヨシ又は原告のグループ企業であって、普通は、「マツモトキヨシ」と読まれる「松本清」、「松本潔」、「松本清司」等の人の氏名を連想、想起するものと認められない。
本願商標は「他人の氏名」を含む商標であるとはいえないから、被告の上記主張は、その前提を欠くものであり、採用することができない。
以上によれば、本願商標は商標法4条1項8号に該当するとした本件審決の判断に誤りがあるから、原告主張の取消事由は理由がある。

 

4.特許庁および裁判所の判断についての私見
本件音商標の言語的要素『マツモトキヨシ』が、権利付与の所轄官庁(特許庁)で他人の氏名を含むと判断され、上級審の裁判所で他人の氏名を含まない、と判断されました。
判断する主体によって、正反対の判断になってしまうというのは興味深いです。
薬などの小売等の指定役務の提供に『マツモトキヨシ』と音商標が使用される際、「松本清」、「松本潔」、「松本清司」等の人の氏名を連想、想起するものと認められないという裁判所の判断が、妥当だと思われます。
本願商標の重要な構成要素である音楽的要素について、特許庁も裁判所も特段考慮しておりません。
本願音商標が使用によって著名になったかどうかという考察はありましたが、音楽的要素を純粋に考察したようには思えません。
本願商標は、十六分音符と四分音符の音階を含みます。かなり早口のリズムです。
このような独特なリズムに乗って流れる『マツモトキヨシ』を聴いた需要者が、他人の氏名を含む、と感じるものでしょうか。

(N.T.記)

2021年12月13日 | カテゴリー: 中小企業向け情報

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